牛首紬の制作工程

【工程1】繭について
蚕が作る繭には一匹で作る単繭と二匹以上で作る玉繭とがあります。玉繭は二匹のカイコのはいた糸が不規則に重なり合っているため製糸工程で高度な技術を要します。 加藤手織牛首つむぎでは単繭を経糸に玉繭を緯糸に使用しています。
【工程2】のべひき
加藤手織牛首つむぎが使用している機械は座繰り製糸機(上州式)と呼ばれるもので、明治初期、我が国に入ってきた形をそのまま使っています。繰糸釜の湯に繭を浮かべ経糸は単繭約80個、緯糸は玉繭約60個から1本の糸を引き出します。そのときの湯の温度は約83度です。糸の太さを揃える技能を要する仕事であり、それらは製糸工の経験から生まれる技術に任されています。
【工程3】管巻き
のべ枠から管に巻き取る。古くは1本1本手で巻き取っていましたが現在は管巻き機により1度に12本まで巻くことができるようになりました。  初めは手回しでしたが昭和34年頃からモーターを使うようになりました。
【工程4】のべつむぎ
管から引き出した糸に少しだけ「撚り」をかけながら大枠に巻きとり「かせ」を作ります。経糸約2500m緯糸約3200mを1かせとします。  初めは手回しでしたが昭和55年動力に改良しました。
【工程5】糸を練る(精錬)
生糸はタンパク質の一種であるフィプロインとセリシンの二重構造になっています。セリシンは蚕が繭の形を作るための接着剤となっています。フィプロインが絹の感触、光沢を生み出すためセリシンを取り除く作業が必要になります。それが精練です。石けんと重曹を用い、経糸1時間5分程度、緯糸1時間15分程度大釜でセリシンを煮溶かします。その後糸に残った石けんやセリシンを落とすため丁寧に水洗いし脱水します。
【工程6】糸はたき
糸を何度もしゃくるようにしてはたき、1本1本の糸にさらなる空気を含ませます。  この作業により蚕が糸をはいたときのうねりを取り戻し、糸の配列を整えます。工程の間間に何度も行うことにより独特の光沢とふんわりとしたさわり心地が生まれてきます。
【工程7】糊付け

経糸は織機にかけたとき「綜(へ)」により「うわそ」「したそ」に分かれてかみ合います。その間を緯糸が通るので口空きをよくしなければなりません。そのために経糸に糊付けをします。糊の原料は米の粉であり、それを煮込み糊を作ります。糸に手でまんべんなく糊を付けていきます。 

【工程8】かせしぼり
糊付けされた糸を「かせしぼり機」を使い糊を搾り取ります。手でハンドルを回し糊を搾り取る、というきわめて単純な道具であるため、糸に無理な力が加わらず、その特性を失わない利点があります。  「かせしぼり機」でおおよそ糊を搾り取った後布で拭き取り糊に偏りがないりように気をつけています。
【工程9】かせくり
経糸、緯糸ともかせを「ぜんまい機」にかけて小枠に巻き取ります。昭和20年代までは1かせづつ手で繰っていましたが、その後動力を用いて1度に16かせまで同時に繰ることができるようになりました。
【工程10】整経
経糸を巻き取った枠を46個から54個並べ整経台の大枠に巻き取っていきます。経糸の数は用途に合わせて894本から1080本とします。15反分を1巻きとします。整経したものを織機にかけるため巻き取り棒に巻き取ります。このとき糸のゆるみを抑えるため「はたくさ(市販のボール紙ほどの厚さ、幅15㎝長さ70㎝紙製)」を当てながら一定の張りを持たせて慎重に巻き取っていきます。
【工程11】管巻き
「ぜんまい機」で小枠に繰り上げてある緯糸を、織機にかけるため小さな管に巻き取ります。   以前は1本1本手で巻いていましたが、現在は管巻き機を使い1度に12本まで巻き取ることができます。
【工程12】機織り

加藤手織牛首つむぎの織機は高機と呼ばれるものを使用しています。「綜(へ)」に通した経糸は、両足交互の足踏みにより「うわそ」「したそ」分かれて口が開き、その中を緯糸を巻いた管を差し込んだ「ひ」が右手の紐の操作により左右に飛びます。「ひ」が1回飛ぶごとに左手で握った「かまち」でうちこみます。両手、両足の力配分、タイミングが牛首紬の風合いを作り出します。

ラベルと証紙

加藤改石と職人